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BIG3だけで鍛えた体は?メリットと不足しやすい部位を解説



こんにちは、アスリートの知恵袋のバラです。

ベンチプレス、スクワット、デッドリフト。この3種目は筋トレのBIG3と呼ばれ、私も選手の基礎筋力を高める場面でよく使います。

3種目とも一度に多くの筋肉を使い、比較的大きな重量を扱えるので、「筋トレはBIG3だけでもいいのでは?」と考えるのも自然かなと思います。

実際、BIG3だけでも胸、脚、お尻、身体後面など全身の大きな筋肉はかなり鍛えられます。筋トレを始めたばかりなら、むやみに種目数を増やすより、基本種目を覚えることに時間を使うメリットもあります。

ただ、フィジカルコーチとして競技者を見ると話はそこで終わりません。スポーツでは片脚で踏み込んだり、相手を引いたり、身体を回したり、一瞬で地面へ力を加えたりします。BIG3だけでは、こうした動きをすべて経験できるわけではないからです。

私が大切にしているのは、BIG3をやること自体を目的にしないことです。選手に何が必要なのかを先に考え、その土台としてBIG3を使い、不足する動きを別のトレーニングで補います。

この記事でわかること

  • BIG3だけで鍛えやすい筋肉と体つき

  • BIG3だけでは刺激が少なくなりやすい部位

  • 競技者が補いたい片脚や回旋などの動き

  • BIG3を競技パフォーマンスへつなげる考え方

コンテンツ

筋トレBIG3とは何か

筋トレBIG3とは、ベンチプレス、スクワット、デッドリフトの3種目をまとめた呼び方です。

どれも一つの関節だけを動かすのではなく、複数の関節と筋肉を同時に使う多関節種目です。そのため、短い時間でも全身へ大きな負荷を与えやすく、基礎筋力を高めるトレーニングとして使いやすい特徴があります。

ただし、BIG3という名前があるからといって、3種目を必ずセットで行う必要はありません。それぞれ役割が異なるので、一つずつ見てみましょう。

ベンチプレス

ベンチプレスは、仰向けになってバーベルを胸の前から押し上げるトレーニングです。

主に大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋が働き、上半身で押すための筋力を高められます。コンタクトがある競技では、上半身で相手や物体へ力を加えるための土台にもなります。

一方、BIG3の中にはベンチプレスと反対になる「上半身で引く」主要種目がありません。この点は、BIG3だけを続けるときに覚えておきたい部分です。

コーチの補助を受けながらベンチプレスを行う男性
上半身の押す筋力を鍛えられるベンチプレス

スクワット

スクワットは、バーベルを担いでしゃがみ、そこから立ち上がるトレーニングです。

大腿四頭筋、大臀筋、内転筋群など下半身の大きな筋肉が参加し、重量を支えるために体幹部も働きます。

走る、跳ぶ、止まる、相手と接触するといった競技動作では、地面へ大きな力を加える能力が必要です。スクワットは競技動作そのものではありませんが、下半身で大きな力を発揮するための土台を作る種目として利用できます。

バーベルを担いでバックスクワットを行う男性
下半身の基礎筋力を高めるバーベルスクワット

デッドリフト

デッドリフトは、床付近にあるバーベルを股関節と膝を伸ばしながら持ち上げる種目です。

大臀筋、ハムストリングス、脊柱起立筋、僧帽筋など身体後面へ大きな負荷をかけられます。バーベルを握り続けるため前腕や握力も必要です。

特に覚えておきたいのが、股関節を曲げ伸ばしするヒップヒンジです。スクワットとは下半身の使い方が異なるため、2種目を組み合わせることで脚の前側だけでなく、お尻や太ももの後ろ側まで刺激しやすくなります。

デッドリフトに取り組む学生アスリートとフォームを確認するコーチ
身体後面と股関節の力発揮を鍛えるデッドリフト

BIG3だけでも全身は鍛えられる

「BIG3だけでは意味がない」ということではありません。むしろ少ない種目で全身を鍛える効率を考えると、かなり優秀な組み合わせです。

ベンチプレスで胸や腕、スクワットで太ももやお尻、デッドリフトでお尻や太ももの後ろ、背部へ負荷を与えられます。

さらに3種目とも、バーベルの重量に対して姿勢を保つ必要があるため、体幹部も参加します。

種目 主に鍛えやすい部位 主な役割
ベンチプレス 大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋 上半身で押す
スクワット 大腿四頭筋、大臀筋、内転筋群 両脚で地面を押して立つ
デッドリフト 大臀筋、ハムストリングス、脊柱起立筋など 股関節を中心に力を出す

筋トレを始めたばかりの人であれば、BIG3を中心に取り組むだけでも身体の多くの部分へ刺激を入れられます。

限られた時間で基礎筋力を高めたい部活生にとっても、この効率のよさは大きなメリットです。

BIG3だけで鍛えた体の特徴

「BIG3だけで鍛えた体はどんな見た目になるのか」も気になるところですよね。

ただし、BIG3をしている人が全員同じ体型になるわけではありません。扱う重量、回数、セット数、食事、トレーニング歴、体格によって筋肉のつき方は変わります。

その前提で、3種目の特徴から発達しやすい部分を見ていきます。

胸に厚みが出やすい

ベンチプレスを継続すると、大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋へ繰り返し負荷が加わります。

そのため、筋肥大を起こすだけのトレーニング量と食事を確保していれば、胸部に厚みが出やすくなります。

ただ、肩の横側にある三角筋中部へ大きな刺激を与える種目ではありません。胸の厚みと肩幅の見え方は別に考えた方が分かりやすいでしょう。

太ももとお尻が発達しやすい

下半身では、スクワットとデッドリフトの両方が大きな役割を持ちます。

スクワットでは大腿四頭筋や大臀筋など、デッドリフトでは大臀筋やハムストリングスなどへ負荷をかけられます。

そのためBIG3だけを続けた場合でも、下半身にはかなりのトレーニング刺激を作れます。

身体後面に厚みが出やすい

デッドリフトでは、重いバーベルに対して背部の筋肉が姿勢を保ち続けます。

そのため脊柱起立筋や僧帽筋など、身体後面の発達につながります。

ただし、ここで「デッドリフトをしているから背中のトレーニングは終わり」と考えるのはおすすめしません。後ほど説明しますが、ローイングや懸垂とは役割が異なります。

◆バラのワンポイントアドバイス
「BIG3だけで鍛えた体」を考えるとき、私は見た目だけで判断しません。競技者なら、胸や脚が発達したか以上に、その身体で押す、引く、片脚で支える、素早く力を出すといった能力がどう変わったかまでが重要です。

BIG3だけで不足しやすい部位

BIG3では大きな筋肉を広く使えますが、身体中の筋肉へ同じように負荷をかけられるわけではありません。

見た目をバランスよく作りたい人はもちろん、競技者も次の部位には目を向けてください。

肩の中部と後部

ベンチプレスでは三角筋前部が参加します。一方、肩幅の見た目に関係する三角筋中部や、肩の後ろ側にある三角筋後部への刺激は相対的に少なくなります。

肩周囲まで発達させたい場合は、サイドレイズ、リアレイズ、フェイスプルなどを使う方法があります。

競技者の場合は見た目だけでなく、肩甲帯の機能や競技で行う投球・接触なども考えて種目を選びます。

上腕二頭筋

ベンチプレスでは肘を伸ばす上腕三頭筋が参加しますが、肘を曲げる上腕二頭筋を大きな負荷で鍛える種目はBIG3に含まれていません。

ただし、競技者なら必ずアームカールを入れなければならないという意味ではありません。

懸垂やローイングを加えることで、背部と一緒に上腕二頭筋へも負荷を与えられます。

背中を引き寄せる筋肉

デッドリフトでも広背筋や僧帽筋などは働きます。しかし、デッドリフトとローイングでは筋肉へ求められる仕事が同じではありません。

デッドリフトでは、バーベルを身体の近くに保ちながら姿勢を安定させるために背部が働きます。

一方、ローイングでは肘を後方へ動かし、腕を身体へ引き寄せます。懸垂やラットプルダウンでは上方から身体側へ引く動きが加わります。

インクラインベンチでチェストサポートダンベルローを行い背中を鍛える女性
BIG3で不足しやすい上半身の引く動作を補うローイング

BIG3だけで上半身を組むとベンチプレスの押す方向が目立つため、競技者ならプル系種目を少なくとも一つ組み合わせたいと私は考えています。

BIG3だけで不足しやすい動き

競技者の記事として、私が特に伝えたいのはここです。

筋肉の名前だけを見て「全身が鍛えられているから大丈夫」と判断すると、スポーツで必要な動きを見落とすことがあります。

BIG3の課題は、鍛えられない筋肉があること以上に、経験できる動きの種類が限られることです。

引く動作

ベンチプレスは上半身の代表的な押す種目ですが、BIG3にはその反対となるプル種目がありません。

柔道、レスリング、ラグビー、ハンドボールなどでは、相手を引き付けたり、腕を身体側へ引いたりする場面があります。

そこで懸垂、ラットプルダウン、シールロウ、ワンハンドローなどを加えます。

垂直方向と水平方向の両方を必ず一日に入れる必要はありません。競技、練習量、時間を見ながら選べば十分です。

片脚動作

スクワットと通常のデッドリフトは、左右の脚を同時に使って大きな重量を扱います。

これは両脚で発揮する基礎筋力を高めるうえで大きなメリットがあります。

しかし、スポーツではスプリント、方向転換、踏み切り、着地など、片脚へ大きな負荷が加わる場面が珍しくありません。

そこでスプリットスクワット、ブルガリアンスクワット、ステップアップ、シングルレッグRDLなどを使います。

両手にダンベルを持ってベンチを使ったステップアップを行う男性
両脚種目に加えて行いたい片脚のステップアップ

若年バスケットボール選手を対象とした研究でも、両脚中心のトレーニングと片脚中心のトレーニングでは、その後に現れる変化がすべて同じではありませんでした。片脚で力を加える動作を高めたい場合には、片脚トレーニングを選択肢へ入れる価値があります。

(出典:International Journal of Sports Physiology and Performance掲載研究)

だからといってスクワットをやめる必要はありません。両脚種目と片脚種目は、どちらか一方を選ぶものではなく役割を分けて使うと考えてください。

回旋動作

スクワット、ベンチプレス、デッドリフトでは、重量に負けないよう体幹を安定させます。

そのため腹部や背部が働きますが、野球のスイング、投球、テニス、ゴルフ、ハンドボールのシュートのような大きな回旋動作はほとんど含まれません。

競技によってはケーブルローテーションやメディシンボールスローなどを使い、回旋しながら力を伝える練習を加えます。

また、身体を回すだけでなく「回されない」能力も必要です。外から加わる力に対して体幹の向きを保つパロフプレスなども選択肢になります。

トレーニングバンドの張力に抵抗して体幹を固定するアスリート
バンドの張力に抵抗して回旋を抑える体幹トレーニング

横方向の動き

BIG3では、主に一定の位置でバーベルを上下させながら大きな力を発揮します。

しかし球技では、横方向への一歩、サイドステップ、切り返し、斜め方向への移動などが何度も現れます。

ラテラルランジやラテラルバウンド、さらに実際の方向転換練習などを使えば、BIG3とは異なる方向の力発揮を経験できます。

ただ、競技動作に似ている種目ほど価値が高いわけではありません。スクワットで基礎筋力を高める役割と、方向転換練習で素早く身体を移動させる役割は分けて考えます。

素早いパワー発揮

高重量のスクワットやデッドリフトは、大きな力を出す能力を高めるために利用できます。

一方、スポーツでは力を出すために何秒も待ってもらえません。

ジャンプ、スプリントの接地、投球などでは短い時間で力を発揮する必要があります。

そのため、競技者ならボックスジャンプ、ジャンプスクワット、ハングハイプル、クリーン、メディシンボールスローなどを目的に応じて組み合わせます。

コーチの指導を受けながらボックスジャンプでパワーを鍛える日本人アスリート
BIG3で作った筋力を素早い力発揮へつなげるボックスジャンプ

ACSMの2026年のレジスタンストレーニングに関する見解でも、筋力、筋肥大、パワーでは負荷やトレーニング量を目的に合わせて変える考え方が示されています。

(出典:American College of Sports Medicine「Updated Resistance Training Guidelines」)

BIG3は競技力の土台になる

ここまで読むと、「では競技者はBIG3をしない方がいいのか」と感じるかもしれません。

そうではありません。

私はむしろ、目的が合っている選手にはBIG3を積極的に使います。

大切なのは、BIG3だけで競技力を完成させようとしないことです。

基礎筋力を作る

筋力が十分でない段階では、ジャンプやスプリントなど高度なトレーニングだけを増やしても、力を発揮する土台そのものが足りない場合があります。

そこでスクワットやデッドリフトなどを使い、まず大きな力を出せる身体を作ります。

上半身ではベンチプレスなどを利用し、競技に必要な押す筋力を高める方法があります。

不足する動きを加える

次に、BIG3だけでは経験しにくい動きを加えます。

例えば上半身なら懸垂やローイング、下半身ならスプリットスクワット、体幹なら回旋や回旋を抑える種目という具合です。

種目数を増やすことが目的ではありません。「今の選手に何が足りないのか」を見て選びます。

パワーへつなげる

最大筋力を高めたら、その力を素早く発揮する練習も組み合わせます。

ジャンプや投球系のトレーニングは、疲れて動作速度が大きく落ちるまで続けるものではありません。

一回ごとの動作を高い速度で行えることを優先します。

競技練習で統合する

最後は、実際の競技です。

ウエイトトレーニングでスクワットが伸びても、相手の動きを見て判断する能力やボールを扱う技術まで身につくわけではありません。

筋力トレーニングで身体の出力を高め、競技練習で技術、速度、判断と結び付ける。私はこの役割分担をかなり大切にしています。

◆バラのワンポイントアドバイス
競技の動きをダンベルやバーベルでそっくり再現しようとしなくても大丈夫です。ウエイトでは筋力を作り、ジャンプやスプリントでは速度を出し、競技練習では技術を磨く。それぞれの役割をはっきりさせるとメニューを作りやすくなります。

BIG3の重量だけを追わない

BIG3を始めると、ベンチプレス何kg、スクワット何kg、デッドリフト何kgという数字が楽しくなってきます。

記録が伸びること自体は成長を確認しやすく、モチベーションにもつながります。

ただし、競技者では挙上重量だけをゴールにしないことが大切です。

重量向上には技術も含まれる

BIG3の記録は、単純な筋肉量だけで決まりません。

フォーム、バーの軌道、呼吸、セットアップ、神経系の適応、その種目への慣れなども関係します。

例えばベンチプレスを繰り返せば、ベンチプレスという動作自体がうまくなります。それも大切な適応です。

ただ、「ベンチプレスが10kg伸びたから競技の上半身能力も同じ割合で上がった」とは判断できません。

体重との関係も見る

競技者では絶対重量だけでなく、体重との関係を見ることもあります。

例えば同じスクワット120kgでも、体重60kgの選手と100kgの選手では、身体を移動させる競技における意味が同じとは限りません。

ただし、「スクワットは体重の何倍なら合格」という一律の線引きもおすすめしません。

競技、ポジション、年齢、性別、トレーニング歴によって求められる水準は違います。

300kgを卒業ラインにしない

BIG3合計300kgを「初心者卒業」とする表現を見かけることがあります。

分かりやすい数字ではありますが、体重や性別を無視して合計重量だけを比べると評価を誤ります。

競技者にとってさらに重要なのは、その重量を達成するために練習時間や疲労をどれだけ使ったのか、その筋力が競技で求められる能力の向上に役立っているかです。

数字は記録として使い、数字そのものを最終目的にしない。この距離感がちょうどいいかなと思います。

BIG3の負荷は目的で変える

同じスクワットでも、筋肥大を狙う場合と最大筋力を高める場合では、重量や回数の考え方が変わります。

つまり「BIG3をやっている」という情報だけでは、どんなトレーニングをしているのかまでは分かりません。

筋力を高めたい場合

最大筋力を高めたい期間では、比較的高い重量を使って少ない回数を行う方法があります。

ただし、毎回1RM測定のような限界重量へ挑戦する必要はありません。

フォームを保てる範囲で負荷を設定し、段階的に重量やトレーニング量を変えていきます。

重量設定に迷う場合は、筋トレのRM・RPEと重量設定も参考にしてください。

筋肥大を狙う場合

筋肉量を増やしたい場合は、一回の重量だけでなく週全体のトレーニング量も重要になります。

BIG3だけで必要な量をすべて稼ぐ方法もありますが、高負荷の多関節種目ばかりでセット数を増やすと疲労が大きくなることがあります。

そのため、BIG3を主要種目にして、必要な部位だけ補助種目で追加する方法も使いやすいでしょう。

パワーを狙う場合

パワーでは「何回できたか」よりも、狙った速度で動けているかを重視します。

ジャンプやハングハイプルなどで疲労が増え、目に見えて速度や高さが落ちてきたら、回数を追加することが必ずしもプラスにはなりません。

筋力、筋肥大、パワーを年間のどこで重視するかは、筋トレのピリオダイゼーションでも詳しく解説しています。

競技者は疲労まで考える

一般的な筋トレと競技者の筋トレで大きく違うのは、ウエイトトレーニング以外にも大きな負荷があることです。

部活ではダッシュ、ジャンプ、対人練習、戦術練習、試合などがすでに行われています。

その状態でBIG3を毎回限界近くまで行えば、競技練習の質を下げることがあります。

毎回限界まで行わない

スクワットであと一回もできないところまで追い込むことが、毎回必要なわけではありません。

特に試合や高負荷の練習が近い日は、余力を残して終える判断も必要です。

「今日は何kgできたか」より「今週どれだけの負荷を受け、次の練習で動ける状態なのか」を見ます。

部活と合わせて考える

例えば月曜日に高重量スクワット、火曜日に全力スプリント、水曜日に走り込みが予定されているなら、種目名は違っても脚への負担が続きます。

筋トレと部活を別々の箱に入れて考えないことがポイントです。

部活との曜日配置については、筋トレ1週間メニューと部活の両立方法も参考にしてください。

筋トレ後にコーチとトレーニング記録を確認する日本人アスリート
競技練習と筋トレを合わせて負荷を確認することが大切

時期によって比重を変える

試合から遠い準備期なら、BIG3を中心に筋力や筋量へ時間を使えることがあります。

一方、試合が続く時期には、セット数を減らして筋力刺激を残しながら疲労を抑える方法があります。

一年中同じ重量、同じ回数、同じセット数を続ける必要はありません。

BIG3のフォームも個別に考える

BIG3には基本となる技術がありますが、全員がまったく同じフォームになるわけではありません。

身長、手脚の長さ、関節可動域、経験などによって、スクワットの足幅や上体角度などには個人差が出ます。

「膝は絶対につま先より前に出してはいけない」といった一つのポイントだけで良し悪しを決めないようにしてください。

初心者は重量より動作を覚える

筋トレを始めた段階では、重量を増やすより先に、同じフォームを繰り返せることを目指します。

スクワットなら自重やゴブレットスクワットから練習しても構いません。デッドリフトなら軽い負荷でヒップヒンジを覚える方法があります。

高重量を安全に扱う環境を作る場合は、パワーラックとセーフティを適切に設定することも重要です。

自宅で器具を使用する場合は耐荷重や設置条件を必ず確認してください。正確な情報はメーカーの公式サイトをご確認ください。

器具は目的に合わせる

BIG3は一般的にバーベルで行いますが、必ず同じ器具でなければならないわけではありません。

初心者ならダンベルやゴブレットスクワットを使う場合もありますし、施設環境や身体の状態によってトラップバーなどを選択することもあります。

本格的にBIG3へ取り組むなら、プレートを段階的に変更できるオリンピックバーベルは負荷を調整しやすい器具です。

また、高重量を扱う経験者ではトレーニングベルトを使うこともありますが、ベルトを着ければフォーム上の課題が自動的に解決するわけではありません。

腰、膝、肩などに痛みがある状態で無理にBIG3を続けないでください。痛みが続く場合や既往歴がある場合は、最終的な判断は医療機関や資格を持つ専門家にご相談ください。

BIG3だけでいい人

BIG3だけ、あるいはBIG3を中心にしたシンプルな構成が合う時期もあります。

特に筋トレ経験が少ない人は、最初から10種目以上を覚えるより、基本的な多関節種目を丁寧に練習した方が進めやすいことがあります。

筋トレを始めたばかりの人

初心者は筋力だけでなく、バーベルを扱う技術もこれから身につけていく段階です。

まず主要種目のフォームとトレーニング習慣を作り、その後に必要な種目を追加していけば構いません。

ただし「初心者だから絶対にBIG3」という意味ではありません。身体や施設環境によって、ダンベルやマシンから始めても問題ありません。

基礎筋力を優先する時期

競技者でも、準備期などで基礎筋力を優先するときにはBIG3の比重を高めることがあります。

この時期には複雑な種目を大量に行うより、主要種目で継続的に負荷を高める方が目的に合う場合があります。

時間が限られる人

トレーニング時間が短い場合にもBIG3は便利です。

多関節種目を中心にすれば、一つ一つの筋肉を別々の種目で鍛えるより少ない種目数で全身へ刺激を作れます。

ただし、時間がないからと3種目を急いで連続して行う必要はありません。高重量を扱う日は必要な休息を取り、フォームを保ちましょう。

BIG3に種目を足したい人

競技パフォーマンスを目的にしているなら、長期的にBIG3だけで完結させない方が組み立てやすくなります。

特に次の能力が競技で必要なら、補助種目を検討してください。

BIG3で少ない要素 追加する種目例 主な狙い
上半身で引く 懸垂、ラットプル、ローイング 身体へ引き寄せる力
片脚で力を出す スプリットスクワット、ステップアップ 片脚での支持と力発揮
回旋する ケーブル回旋、メディシンボール 下半身から上半身への力伝達
回旋を抑える パロフプレス 外力に対する体幹の安定
横方向へ力を出す ラテラルランジ、ラテラルバウンド 横移動や方向転換の土台
素早く力を出す ジャンプ、ハングハイプル パワー発揮

この表にある種目を全部入れる必要はありません。

サッカー選手と柔道選手、野球選手では必要な能力の比重が違います。同じ競技でもポジションや選手自身の課題で変わります。

「BIG3に何を足すべきか」ではなく、「自分の競技で必要なのに、今のメニューにないものは何か」と考えるのがポイントです。

BIG3を3種目セットにしない

BIG3という名前があると、ベンチプレス、スクワット、デッドリフトをひとまとめに考えたくなります。

しかし競技者のプログラムでは、一つずつ必要性を考えて構いません。

スクワットだけ使う場合

下半身の基礎筋力を高めたい選手なら、スクワットを主要種目にして、上半身は懸垂や別のプレス種目を選ぶこともあります。

「スクワットを採用したからベンチプレスとデッドリフトも必須」という決まりはありません。

デッドリフトを変更する場合

床からのデッドリフトが現在の選手に合わなければ、RDLやトラップバーデッドリフトなど別のヒンジ種目を使う方法もあります。

目的が股関節周囲の筋力向上なら、目的を達成できる方法は一つではありません。

目的から逆算して選ぶ

ここがフィジカルトレーナーとして一番大切にしたいところです。

「BIG3だからやる」のではなく、「この選手にこの能力が必要だから、この種目を使う」と考えます。

種目は目的ではなく手段です。

スクワット、ベンチプレス、デッドリフトが目的に合えば使えばいいですし、別の種目の方が合うなら変更して構いません。

◆バラのワンポイントアドバイス
選手へ種目を指示するとき、私は「なぜ今これをやるのか」を説明できるかを自分に問いかけます。答えが「BIG3だから」「みんながやっているから」だけなら、一度プログラムを見直します。選手の競技特性、現在の課題、疲労状態まで含めて理由を持つことがフィジカル指導では欠かせません。

BIG3に関するよくある質問

最後に、筋トレのBIG3だけを続ける場合によく出る疑問へ回答します。

BIG3に関するよくある質問(FAQ)

Q1. BIG3だけでも全身を鍛えられますか?

A. 大胸筋、大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングス、脊柱起立筋など大きな筋肉の多くを鍛えられます。そのため基礎筋力を高める目的には効率的です。ただし、上半身で引く動作、片脚動作、回旋、横方向、素早いパワー発揮まで十分に経験できるわけではありません。

Q2. BIG3だけで背中は鍛えられますか?

A. デッドリフトで背部の筋肉は使われます。ただし、ローイングのように腕を身体へ引き寄せたり、懸垂のように上方から引いたりする動きとは異なります。背中の発達や上半身の引く能力まで考えるなら、懸垂やローイングを加える方法があります。

Q3. BIG3だけで腹筋や体幹も鍛えられますか?

A. 重量に対して姿勢を保つため、BIG3でも体幹部は働きます。ただし競技では回旋したり、外からの回旋力に抵抗したりする能力も必要です。競技特性によってはパロフプレスやメディシンボール種目などを追加してください。

Q4. BIG3合計300kgなら初心者卒業ですか?

A. 300kgという数字だけで一律に判断するのはおすすめしません。体重、性別、年齢、トレーニング歴によって同じ合計重量でも意味が変わるからです。競技者なら合計重量だけでなく、競技練習との両立や必要な身体能力が向上しているかも確認しましょう。

Q5. 競技者もBIG3だけでいいですか?

A. 基礎筋力を高める時期にはBIG3を中心にする方法があります。ただ、長期的には競技で必要となる引く動作、片脚動作、回旋、横方向、パワー発揮なども目的に合わせて加えることをおすすめします。BIG3は競技力の完成形ではなく、土台として考えると使いやすくなります。

BIG3は土台として活用する

筋トレBIG3だけでも、身体の大きな筋肉の多くを鍛えられます。

ベンチプレスで上半身の押す筋力、スクワットで下半身の筋力、デッドリフトで股関節と身体後面を鍛えられるため、少ない種目で基礎筋力を高めたい人には非常に使いやすい組み合わせです。

一方、競技者に必要な動作はBIG3だけでは完結しません。

  • 懸垂やローイングで上半身の引く動作を補う
  • スプリットスクワットなどで片脚動作を補う
  • パロフプレスや投球系種目で回旋を補う
  • 横方向への種目で多方向の力発揮を補う
  • ジャンプなどで素早いパワー発揮を補う

そして忘れてほしくないのが、すべてを一度に追加する必要はないということです。

競技特性、現在の体力、課題、トレーニング経験、練習量、疲労状態を見ながら必要なものを選びます。

BIG3をやること自体を目的にせず、選手に必要な能力から逆算してトレーニングを選ぶ。

BIG3で基礎筋力を作り、不足する引く方向、片脚、回旋、パワー系の能力を目的に応じて補うことが、競技者のフィジカルトレーニングでは大切です。

「何をやらせるか」だけでなく、「なぜこの選手に、このトレーニングが必要なのか」まで説明できるプログラムを作っていきましょう。

-筋トレ基礎・メニュー設計